彼が落ち込んだ、
というより怒ったのには理由がある。
こういったツアーの場合、訪問予定の
お土産やさんには先に話しがしてある
のが普通だ。何日の何時ごろ日本人を
二人連れて行くからよろしくね、という具合に、
セッティングしておくのだ。
インドでそこまで細かい打ち合わせ
をしているかどうかは知らないが、
少なくとも行き付けの土産屋ぐらいは
あるに違いない。
そしてそこでは、
観光客を連れて行くツアー会社と、
連れてきてもらう土産屋との間に、
ある契約が結ばれる。(たぶん)
「土産屋はその観光客から出た売上げ金の何割かをツアー会社側に払う」
いわゆるマージン/marginというやつだ。
上の例で言えば、
もしそこで俺かKが買い物をすれば、
その支払い金額(土産屋から見た売上げ金額)
のいくらかは、サミュエルの手に渡る
というわけだ。
だから彼は
俺達をいろんな土産屋に連れて行きたがるし、
それらは全て観光客向けの高級店だ。
しかしこちらからしてみれば、
買い物なんてどうでもいいし、
何より、訳も分からず知らない
場所に連れて行かれるのは
いい気分ではない。