ジャイプールにて

あまりの自由時間の無さに

サミュエルに文句を言った。

ちょっとは好きなところに行かせてくれ

と。





そしたらサミュエル、

意外とすんなり承諾。

ここで降ろすから

ホテルまでは自分達で帰れ

明朝は〜時に迎えに行く。


だとさ。







やっと解放された気分だ。

さて何をしようか。

というかまずここはどこだろうか。

地図を見てもよく分からないので

とりあえず、公園で昼寝をすることにした。



だだっ広くて、緑の多い公園。

アスレチックや滑り台の類は

一つもない。

ただの広場。

人はまばら。

みんな好き勝手に寝転んでいる。

天気は最高に良くて、うだるほど暑かった。

木の影に入って、芝生の上に横になる。

ふと見上げると、リスがいた。

本物を見るのは初めてかもしれない。













(別の世界みたいだ。ここは。)











穏やかで、透明な空間が

そこだけ浮き上がっているようだった。

観光都市ジャイプールの喧騒が

薄い膜を通して聞こえてきた。













(Kほんとに寝てるし)











ミネラルウォーターのペットボトルを枕に、

10メートルぐらい離れた木陰で、

Kはマジ寝に入っている。







荷物の心配はあったが、

ここにきて疲れが出た。

俺の方も目を閉じて、うとうとした。















どれくらいそうしていただろうか。

1時間か2時間か。

その間俺とKは

本当にただボーッとするか

眠りこけるかしながら、

ほとんど会話も交わさずに

そこの空気に首までつかっていた。







途中二人の青年が話し掛けてきて

少しだけ仲良くなった。





「日本からインドまではどれくらい時間かかる?」

「何か日本の物を見せてくれ」





二人は学生らしく、けっこう金持ちそうだった。







起こった事件といえばそれぐらいで、

あとは物乞いに1ルピーあげたとか

フルーツの歩き売りを断っただとか

その程度。















何もない昼下がり。





だけど





インドらしい時間だった。





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