今回は旅行記を少しシンプルに書こうと思う。飾り気を無くし、ありのままを伝えようという 試みだ。また、少し旅行記の進むペースを速めようと思う。今まで番外編を抜かせば16話まで書い てきたわけだが、実は旅行自体はまだ3日しか進んでいない。そこで今回は一話で3日分話を進めた。 別に手抜きではない。これはある意味筆者の読者に対する善意である。書くのがめんどくさくなって きたとかそういう理由では決してない。ついでに言うと、最近ホームページの更新が滞っているのは 、純粋に管理人が多忙なためであり、別にめんどくさいとか、飽きてきたとかいう理由はない。と思う。 たぶん。うんきっと。そこんとこよろしく。

ジャイプールを出発してジョドプルに向かう。

車で4,5時間の道のり。

途中便意を覚えるがとりあえず我慢する。

その後吐き気をもよおす。

乗り物酔いである。

著者は元来酔いやすい体質なのである。

吐き気と便意に耐えながら

サミュエルの死線ぎりぎりの運転を

固唾を飲んで見守る。

彼のスピードの出し方。

追い越しのタイミング。

センターラインもなんのその。

スリル満点の5時間はまさに未体験ゾーン。

死んだおじいちゃんが大きな河の向こうで手を振っているのを何度か見る。

昼過ぎ頃、ジョドプルのホテルに到着。

ジャイプール同様、かなりきれいな三ツ星ホテル。

顔面蒼白で車を降り、チェックインはKに任せ

とにかくトイレに向かう。

予想通り下痢である。

部屋に上がり、ベッドに横になる。

気持ち悪くて立てない。

夕方になっても体調が回復しない。

どうやら乗り物酔いから病気に移行したらしい。

何も食う気がしない。

熱っぽい。

だるさと熱さと吐き気で一所にじっと寝ていられない。

相変わらず下痢は続いている。

Kはしきりと

「何か食わなきゃ」

というようなことを言っている。

彼は皿にご飯を山盛り盛ったのをフロントに頼んで持ってきた。

俺は匂いをかいだだけで吐きそうになる。

バナナやマンゴーなどのフルーツだけなんとか食べる。

今度はKはどこからか何かの粉末を買って来た。

ペットボトルの水に溶かせば、

インド版ポカリスエットの完成である。

味は慣れるまでは正直まずい。

またKは近くの病院へ行って薬を買って来もした。

なにやら怪しげなでかい錠剤を、俺は食後に飲んだ。

丸二日、こんな状況が続いた。

次に行く予定だったウダイプルは

Kがサミュエルに頼んでキャンセルにしてもらった。

後で聞いた話では

サミュエルはなかなか了承しなかったそうだ。

もうホテルやお土産屋さんに

日本人のカモが行くと連絡してあるからだろう。

でもジョドプルのこのホテルのオーナーさんがいい人で

事情を聞いて、直接サミュエルの上司と電話で交渉してくれたらしい。

Kは今度のインド旅行で一番思い出深いのは

このジョドプルだと言う。

俺が体調不良で寝ている間

暇に任せて町を歩いた経験。

町に出て、人と話したこと。

詳しくは知らないが、なにかそういうのが

よかったのだそうだ。

俺はと言えば、

ただ寝てただけ。

このジョドプルで記憶に残っているシーンと言えば

ホテル到着と、部屋と、

だいぶ回復してから上ったホテルの屋上と、

まだ全快しないままプシュカルを目指して乗り込んだ

サミュエルの車ぐらいなもんである。

今回のインド旅行最悪の日々。

でも一方で

このジョドプルの苦しみを何かの拍子で思い出すとき

同時に思い起こされるのは、

ひたいの濡れタオルをこまめに取り替えてくれたKであり、

病床の俺のために奔走してくれた友人である。

それを思うとき俺は

彼に対する感謝の念を禁じえないのである。



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