眠い。眠いぞ。


飛行機の中じゃ熟睡もできないし

長時間同じ姿勢で座っていたから足がだるい。

何よりこの時間だ。

身体が睡眠を要求している。

まったく

午前四時にデリーに着いて何をしろというのだ。

とりあえず

眠い。













あたりまえのことだが

日本からインドに行くには

飛行機に乗らなければならない。

俺もKも

船で行こうと言うほど物好きではない。

したがって

旅行の準備を始めるに当たって

まずしなければならないことは

飛行機のチケットを取ることであり、

その際

決して裕福とは言えない二人が選ぶ選択肢は

初めから、ほぼ暗黙のうちに決まっていた。







「格安航空券」







とにかく安さが売りのこの手のチケットを

ネットで片っ端から探した結果

たどり着いたのがこのお値段

























成田デリー往復33800円

































安っ!!

安いなおい!

大丈夫か中華航空!?

みたいな。

しかし世の中そんなにうまい話はない。

安さの換わりに何かしら好まざる特典がついてくるのが

格安航空券である。

案の定俺たちの場合も

予約した後になって

出発と到着の時刻が知らされた。







































(行)デリー着3:00a.m.
(帰)デリー発1:00a.m.



うわ、おせー

どっちもおせー




しかししょうがない。

いまさらキャンセルもできないし

どの飛行機も同じようなもんだろう。

何より、値段優先

安さが一番だ。









ということで乗り込んだチャイナエアー。

ほぼ定刻どおりにデリー到着。

何やかやの手続きで、

税関出たのは午前四時。

とりあえずどこかで眠りたい。

しかし

この時間に外を出歩くことが

どれほど危険なことかは

いくら旅行経験の浅い二人でも

理解できた。

プリペイドタクシーという手もあるが

もうそういう面倒くさいことはしたくない。



よし



空港で寝よう。



待合ロビーの椅子に座って寝ることにした。












ここで読者のあなたに思い出していただきたい。

ここはインドである。

周りは全員インド人である。

一歩空港から踏み出せば

そこは首都デリー郊外の町であり、

そのなんとも言えない匂いと雰囲気が、

(人間と牛とカレーと宗教と汚物と・・・。

そういうものの空気だろうか)

空港内にも染み付いている。

当然のことと分かっていながら、

俺は再確認した。



旅はとっくに始まっているのだ。




眠い頭に、急に冒険心が目覚めた。















「交代で寝よう」
「そうしよう」
































意味ね〜







今思えば

確かに荷物とられるのは怖いけど

鍵も持ってたし、チェーンも持ってたから

鍵かけてチェーンでどっかにつなげば

盗まれる心配はなかったんじゃないの?

だってライフル持った警備員までいるんだよ?










しかし

一度覚醒した「Stand by Me」的冒険心が消える頃には

外はすっかり明るくなっていて

結局二人ともまともな睡眠はほとんど取れぬまま

デリー中心部へ向かうこととなった。

(この後デリーでやらかしたへまの原因の一つは

この睡眠不足による判断力の低下にあるのかもしれない)












特にKは

初海外の緊張もあってか

慣れない機内食で腹を壊し

初日からトイレとお友達状態だったので

ほとんど眠れなかったそうだ。







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