tabiato2 in kyu-syu |
+-- 夜行列車 --+ | |||
この旅を思いついた時から これだけは決めていた。 他のことは後から考えるとして これだけはこれだけはゆずれねー。 夜行列車 旅につきもののこの乗り物に 俺は一種の憧れさえ持っていた。 絶対乗る。 最初から決めていた。 そしてやってきた出発当日。 まもなく〜3番線に〜電車が参ります 黄色い線の内側まで〜お下がりください〜 来た。ついに来た。 心配性の俺は、念には念を入れて 発車時刻の30分前には ホームに来ていたのだ。 いよいよ乗れる。 憧憬の夜行列車。 とここであることを思いついた。 そうだ 写真撮ろ。 前年の夏に買ったデジカメはまだ新しく 使い慣れていないが、だからこそ 使いたかった。あたり構わず 撮りまくりたい気分だった。 一番前で正面から撮ってやろう。 俺はホームの端まで行って ポケットからカメラを取り出した。 今まさに来たらんとする 寝台特急「富士」を見据えて。 プァーーーーーー 初め、ライトの逆光で見えなかったその面が だんだん輪郭を現してきた。 濃い青の、ごつい熊みたいな顔。 俺はすかざずカメラを構えた。 (アングルはここで。) プルルルルルルルルルル (もうちょっと近くがいいな。) プルルルルルルルルルル パシャ(どうだ!ん〜いまいち。もう一枚) プルルルルルル3番線まもなく発車です。ルルルルルル パシャ(今度は・・・よし。撮れたな。) 3番線発車します ・ ・ ・ え 状況を把握するのに3秒ほどかかった。 事の重大さに気付いて俺は走り出した。 俺はアホか。 写真に夢中になって電車に乗るのを忘れてた。 しかし幸い車両は目の前だ。 乗れる。 と思いきや、何だ!? ドアが開いてない 寝台列車の場合、1両目は車掌さんとか荷物用で 乗客が乗り降りできるのは2両目からなんだそうだ。 って 聞いてないよ 次は・・・ここも開いてない! やばい。 走った。 次のドアがものすごく遠い。 ここは・・・開いてる! 手すりを掴んで身体を引っ張り飛び乗った。 居合わせた車掌さんに 「これ富士ですよね!?」 聞いた瞬間、後ろでドアが閉まる音がした。 「はいそうですよ。」 冷静な返事が返ってきた。 寝台特急「富士」
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