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トゥルルルルル・・・



響く電話のベル。何気ない一日の、聞きなれた日常の音。男はいつもどおり、受話器に手を伸ばした。



この音を聞いた瞬間の人間の心理は面白い。遠くで電話口に立つ人物を想像して、 期待や不安を抱く。場合によってそれは、喜びの音にも落胆の音にもなりうる。あれほど 短く、単調で、しかし人の心を動かす音を、俺は他に知らない。



この男も、きっとそうだったのだろう。友人か親戚か、それとも見知らぬ人物か、 瞬時に活性化した脳の中で、無意識の選択に精を出していたに違いない。期待と不安と 少しの面倒くささを抱えながら、ある種のほんの少しの決心によって、受話器に手を伸ばしたに 違いない。いつもどおり。昨日も、おとといもそうだった。



(誰からだろう。何の話しだろう。)














しかし














男が相手の声を確かめることは無かった。天国からのお迎えか、死神の誘いの声なら、あるいは聞こえたかもしれない。



感電死




受話器を取った瞬間だった。













ネパールを訪れたときに、この話しを聞いた。一昔前の事件だが、実際に新聞にも載ったらしい。 当時のネパールは今以上に先進国との差が激しく、技術面では、街角の工事一つとっても、 ずさんな処置や手違いが多かったようだ。

例えば、誤って電線を電話線につないでしまう、とか・・・。  


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