マニラに一泊後、一行を乗せたバスはバターン州オリオン町サバタン村に向かった。
片側2車線の広い道路をながいこと走って、雄大に広がる原野にも飽きた頃、ふいにバスが横道に入った。車一台がやっとの幅で舗装もされていない。側面を木にこすりながら、よっこらよっこら進んでいく。
しばらくして細い道から広場に出るとそこは、俺が想像していたフィリピンだった。石と葉っぱでできたような平屋が建っている。茶色の地面に緑の木々や畑が映える。子どもが決まり悪そうに笑いかけてくる。手を振ったら恥ずかしそうにして逃げてしまった。
この村を訪れた目的は、PRRM(Philippine Rural Reconstruction Movement)という現地NGOの援助によって作られた小規模薬局の見学だ。これは、各地の村に女性保健ワーカーを育成するとともに、薬局を設置することによって、早く、安く薬が手に入るようにするというプロジェクトである。また、薬局では簡単な医療も施せるようになっている。
サバタン村の場合、薬局がサリサリストア(Study3参照)に併設されていた。その方が村人が薬を買い易いからだ。店の前には、村の戸数と人口の書かれた地図が立ててあった。保健ワーカーの調査によるものだそうだ。年2回の調査で必要な薬を調べている。ここで買う薬は町で買うよりもかなり安い。またこの地区からは病院も遠いため、薬局は村人にとって大きな助けとなっている。
村人とのミーティング中、俺が一番気になっていたことを聞いてみた。
「どれくらいの人が利用しているんですか?例えば月に何人とか。」
「一日に20人ぐらい来ます。」
多っ!!
多いなそれ!ほんとかよ!
この村がそれほど病んでいるのか、それともただの誇張なのか。
女性保健ワーカーの人たちはボランティアではたらいている。薬局のわずかな収入は、一年貯めてクリスマス(Study4参照)の祭りのために使うのだそうだ。
ところで、ここの薬局では50ペソ払うと会員になることができる。現在会員は24名。俺たちは全員会員になった。会員になると薬が安く買える、などの特典は特に無い。だけど、次にこの村に来て風邪をひいたときには、薬がもらえて安心だ。
それに、クリスマスの時に来たら、きっと祭りに混ぜてくれるだろう。