Study8 in Philippine
+-- プレハブ小屋 --+

天気が良くて、空が抜けそうだった。遠くの水平線の上には白くぼやけた雲が乗っかっていて、青い海面には今朝丁度乗ってきたのと同じ型の船がいくつか走っていた。船はおもちゃみたいに小さく見えた。海岸線に立つ俺の足元から、はるか遠く空と海とが接するあの偽物の境界線までの距離が、やけに短く見えた。いや、今だから短く見える。本当はあまりに遠い。

漁から帰った後、一行は地域の漁民組織連合SUGPO(スグポ)とのミーティングに出かけた。バスで移動して、着いた先はカプニタン村からは少し離れた別の海岸。迎えてくれたのは、たくましいが若くはない地元の漁師たちだった。村とか地区単位の小さい漁民組織を総括しているのがこのSUGPO。違法漁船の取り締まりとか、植林とかの事業を主体的にやっている人たちで、今日俺が一緒に漁に出たおじさんもこの組織の中心メンバーだ。

彼らの活動説明を聞いたり、質疑応答があったりして、一通りミーティングが終わった。終始明るい雰囲気。その後昼食をみんなで食べた。



ミーティングの会場となったのは、海に張り出して作られた、プレハブ小屋みたいなとこ。竹っぽい木でできていて、床や壁は隙間だらけ。というか、風を通すためにわざと隙間を作っているのかもしれない。床の隙間から海面が見える。昼食を取りながら見ていると、魚がいた。長さ10cmぐらいの細いやつ。隙間から米粒を落としてみたら、ものすごい素早さで食らいついた。

小屋にはちゃんとトイレもついている。もちろん便器もある。流すのは相変わらず手動。バケツの水を使用後の便器に流し込む。

小屋の横では海に飛び込んで遊ぶ子どもたちがいたり、がひもでつながれてたりする。なぜなのかは謎。

昼食後、外に出て一休み。熱帯の空気と晴れた海がよく合う。気持ちがいい。

(飛び込んじゃうか)

と、ここで、ある音に気付いた。

ジョボジョボ

液体が液体に落ちる音。どこからだ?

音源はプレハブ小屋だった。小屋の一角から水が流れ落ちて海に注いでいる。

あそこの一角は確か・・・

トイレ

あ〜、流した“もの”はそのまま海へ、っていう仕組みね。なるほど。有機的だね。うん。なるほどね。

・・・。

飛び込むのはやめておこう。



ミーティング

飛び込む子ども