インドで最初の朝日を空港のロビーで迎えた

俺とKは

・・・。

眠くて動く気がしなかった。

長時間の移動の疲れと寝不足とで

だるくてしょうがない。

しかし

そんな日本人観光客に

インドは容赦しなかった。

朝6時ごろだったろうか

一人の男が話し掛けてきた。

Kは寝ている。

男は言った。

「!S“○▲◇=〜‘Y()|〜=!{}|~{}*_?~|=」$#$%&’((HGIisg)$%&%&’(=`*{━}))」

さっぱりわかんねー

周りの騒音に邪魔されたせいもあるが、

インド英語がこれほどだとは。

なまりが激しくて聞き取れない。

自分の英語力が足りないのは重々承知している。

しかしそれにしたってこれは

わからなすぎだろう。

とりあえず聞き返してみた。

「You !”#$%^airport |{`}*go out」OUG[ my car$&~]’ber36530\^Delhi iwonOEONvp[\0hIG#Q(BIVH)#R()]」

ん〜ちょっとずつ分かってきたような・・。

何度か聞いているうちに

やっと話がつかめてきた。

男の言っていることは

つまりこうだ。

「もう朝の飛行機が動き出して人が出てくるから
とりあえずそろそろロビーから出なくてはいけないよ。
良かったら僕の車でデリー市街まで連れてってあげようか?」

来た

ついに来た

これこそスリル

これこそ危険

これでこそインドだ

そう

この男

俺をだまそうとしているのだ。

「いやいいです。バスで行くんで。」

「バスは危ないよ、スリがいるし。時間もかかるしね。」

「じゃあ、リクシャーかタクシーで行きます。」

「それはやめた方がいい。高いからね。
僕なら半分の値段で行ってあげるよ。」

「いやほんとにいいんで(っていうか金取るのかよ)。
あの、あなたは飛行場の方ですか?」

「え?僕?あ〜、そうだよ。そう。飛行場のオフィサーさ。」

しまいにはこんな苦しい嘘までつく始末。

だいたいこういう場合

車に乗ったら最後

目的地にはまず行けないだろう。

その辺のシルクショップだの宝石屋だの

なんやかやと土産屋に連れて行かれるのが落ちだ。

もしかしたら

もっと危ない誘いという可能性もある。

と、これは旅行を終えた今だから言える知識であり

そのときの俺には

そこまで具体的に先を読めるほどの

経験値はまだなかったものの、

小さい頃教わった

知らないおじさんの車に乗っちゃいけませんよ

的な教訓を思い出しながら俺は

全力で断った。

っていうか

後半は英作するのもめんどいし

ほとんど無視してた。



「!“#YOU(‘%$=96{}?_|=P+OKGOOUTHERE|~=%$#P+?_){}&!#$%””!!!???」

「あ〜No、No、のーさんきゅー」

やがて男もあきらめが入ってきた。

こっちはもうのーさんきゅー連発である。

ち、こいつひっかからねえなぁ

みたいな顔をして

男は去っていった。

俺は大きく息をついた。

なにしろ

これがインド人とのファーストコンタクトである。

不安と緊張と英語力不足で

ものすごくいっぱいいっぱいだった。

正直、最初話し掛けられたときは

果てしなく焦った。

初日からこれだ。

こんなんで約1ヶ月弱、大丈夫なのだろうか。

俺の心配をよそに

いつのまにか起きていたKが言った。

「今のおっさんなんだったの?」

こいつやっぱばかだ・・・。