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インド初日

 

空港を出た俺たちは

 

デリーの中心街である

 

コンノートプレイスまで行くために

 

バスに乗った。

 

まだ朝なのにけっこう暑くて

 

サリーを着た女性とか

 

クルタ・パジャマ姿の男性とか

 

ターバンを巻かれた頭とか

 

ムスリムの家族とかに

 

目を奪われながら

 

まだインドの匂いを

 

覚えられずにいた。

 

バックパックを背負って

 

めがねをかけた東洋人は

 

彼らにどう写ったんだろう。

 

 

 

 

コンノートプレイスに着いたらしい。

 

人の流れに沿ってバスを降りた直後

 

一人のおっさんが話し掛けてきた。

 

「あっちでバスのチケットに

判子を押さなくちゃいけないんだよ。」

 

一瞬信じかけてから思い直す。

 

そんな話あるか。

 

他の客はもう歩きだしている。

 

自分の店にでも連れ込もうとしたのだろう。

 

しかしちょっと嘘がお粗末過ぎた。

 

無視して歩き出す。

 

 

 

 

コンノートプレイスは広い。

 

円形に太い道路が何周かめぐっていて

 

ビルが立ち並ぶ大都会だ。

 

一周したら2kmぐらいだろうか。

 

 

 

 

とりあえず

 

ITDCに行って

 

地図やら情報やらをもらうことにした。

 

ITDCというのは

 

ガイドブックにも載っている観光案内所で

 

インドの観光地にはたいていあるものだ。

 

だけど場所がいまいちわからない。

 

というか俺は今どこにいるんだ?

 

地球の歩き方の地図では

 

現在位置をつかむことはできなかった。

 

人に聞かなくては

 

と思いつつ歩いていたら

 

リクシャーのおっさんに声を掛けられた。

 

「ちょっと!乗る!?乗りなよ!どこ行くの!?」

 

「のーさんきゅー!」

 

「待ちなよ、ねえ、リクシャーリクシャー!」

 

「おいおまえ、あっちいけ!いらないって言ってるだろ。

あ!?なに!?いいからどっか行け!あばよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っていうかあんた誰!?

 

 

そう、リクシャーのしつこい客引きをおっぱらったのは

 

俺でもKでもなく

 

突然現れた知らないおじさんだった。

 

 

「ああいうのは危ないからな。気をつけろよ。

俺か?俺はネパール人で宝石商をやってる。

なぁに、礼はいらないよ、お金なんてほしくないさ。

なに?ITCCを探してるって?

それならこの先だ。連れて行ってやろう!」

 

 

 

 

明るいこのおじさんは

 

親切にも目的地までいっしょに来てくれた。

 

 

 

「ここだここ。ほら書いてある。

気をつけろよ、インドには悪いやつがいっぱいいる。

外国人旅行者と見たらすぐ狙われちまう。

でもな、だからといって弱気になっちゃだめだ。

いつも周りを心配してきょろきょろしてると

逆に狙われちまう。だから

胸を張るんだ。自信を持て。

強気で行くんだ。いいかい?

よし、じゃあな!いい旅を!」

 

 

だいだいこんなことを言っていたと思う。

 

インドで初めて

 

いい人に逢った。

 

握手をして別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入る。

 

内装は整っていて

 

クーラーまで効いていた。

 

男が出てきた。

 

ワイシャツにネクタイ姿。

 

中年太りの下っ腹が

 

ズボンを中から圧迫している。

 

 

 

暑さと

 

車の排気と

 

ごみごみした歩道と

 

警戒心から解放されて

 

少し落ちついた気分だった。

 

 

 

 

「地図がほしいんですけど。」

 

 

「まあ座ってください。」

 

 

「あぁ、はい。」

 

 

「どちらから来られ

たんですか?日本?

そうですか。それで

今回の旅行は何日間?

ほ〜三週間とちょっと

ですか、短めですねぇ」

 

 

 

「あの、地図がほしいんですけど。」

 

 

 

「はい、こちらですね。

これがコンノートで

今我々がいるのがこの

辺り。観光するとした

らこのお城とか、あと

ここの旧市街などが

あります。」

 

 

 

うん、けっこうちゃんと説明してくれている。

 

 

 

 

「ところで、次の目的地

はお決まりですか?

なるほど。でもこちらの

地方も良いですよ。」

 

 

 

へ〜。

まあ聞くのはただだし。

 

 

 

 

「こんなルートはどうでしょう。

デリーの次は西の州に行って

それからタージマハルのある

アーグラ、ガンガーのある

バラナシへと。」

 

 

 

 

いやルートぐらい自分で決めるって。

 

 

 

 

 

 

「ここで電車の予約をすれば安いですよ。」

 

 

 

 

 

いいから地図くれよ。

 

 

 

 

 

「宿もお取りしますよ。」

 

 

 

 

 

「いや、全部いりません。」

 

 

 

 

 

 

 

!?

こいつ

何を言い出すんだ?

 

 

 

 

何を思ったのか

Kがあからさまに

拒絶を始めたのだ

 

 

 

 

 

「自分で旅行できるんで、大丈夫です。」

 

「いや君たちだけでは危ないよ。」

 

「自分だけでやりたいんです。」

 

「宿も電車も苦労するよ?」

 

 

「トライしたいんです」

 

 

 

 

下っ腹が笑う

 

 

 

「はっ、じゃあだまされて荷物盗られてもしらないぞ」

 

 

 

 

↑キレ気味。

 

 

 

「ええ、ありがとうございました」

 

 

 

 

もうKは立ち上がっている。

 

喧嘩別れだ。

 

どうしてこんな態度を取ったのか。

 

その後話したら

 

どうやらK

 

危険を察知したらしいのだ。

 

「ツアー組ませようとしてたって、あれは」

 

なるほど。

 

しかしおかげで

 

たいした情報は

 

得られなかった。

 

「何も喧嘩することは無かったんじゃないの?」

 

俺としては

 

話しだけもうちょっと

 

聞きたかった。

 

断るのはその後でもいい。

 

「危なかったって!」

 

こっちの会話まで

 

険悪になってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後で調べたことだが

 

あのITDC

 

実は偽物だったのだ。

 

本物は全く別の

 

場所にあった。

 

おそらく頭文字だけ

 

合わせて単語を変える

 

などの猪口才な手口で

 

名前を似せて

 

観光客を引っ掛けているのだろう。

 

 

Kは正しかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インド旅行の最後

 

再びデリーに戻ってきた俺は

 

一人でコンノートプレイスを

 

歩いていた。

 

この辺は見覚えがある。

 

左の商店街を眺めていると

 

一人の男が声を掛けてきた。

 

「ハロージェントルマン!何かおさがしですか?」

 

「いえ何も。さようなら。」

 

軽くあしらって歩き出した。

 

ワイシャツにネクタイ姿の中年太りと

 

ITDC”の看板を背にして。

 

 

 

 

 

 

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